皮膚の構造・機能
構造
皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の3構造からなります
機能
バリア機能
機械的刺激、水分保持、病原菌の侵入や細菌の繫殖防止、紫外線からの防御
知覚作用
触覚、痛覚、温覚、冷覚の感知
体温調節
熱の放出、熱損失の防止
スキンケアの必要性
表皮の角質層はバリア機能として重要な役割を担っているため
基本的に「スキンケア=表皮の機能を維持すること」と考えられ
クリティカル領域の患者においては組織の血流低下や物理的・科学的刺激といった
外的要因によって皮膚障害を発生しやすく皮膚障害が生じると
治癒しにくいことから「皮膚障害を予防すること」も基本的なスキンケアに包括されます
皮膚を脆弱にする要因には老化・浸軟・ドライスキンが上げられます
肝不全や、腎不全時もは、皮脂の分泌機能低下や細胞分裂抑制が生じるため
皮膚の再生低下が生じ、脆弱となります。また免疫・代謝機能の低下が生じると
皮膚の生理機能や組織耐久性が低下します。
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基本的スキンケア①
皮膚の機能を理解したうえで、基本的なスキンケアを実践することが重要
①皮膚表面の汚染除去
皮膚表面の汚れとは、皮脂・汗・角質・尿・便・病的常在菌など
皮膚のpHに近い弱酸性の洗浄剤を用います
洗浄時には、洗浄剤を十分に泡立て泡で汚れを浮き上がらせ
包み込むようにし、十分な湯(37~39℃)で洗浄します
洗浄が不可能な場合は、ふき取るだけで汚染を除去できる弱酸性洗浄剤(界面活性剤が乳化されたもの)や皮膚洗浄クリーム(天然オイルが乳化されているもの)を用います。
②洗浄後の皮脂を補う
洗浄剤を用いて洗浄した後の皮膚は皮脂膜が除去され
天然保湿因子や角質細胞間脂質が流出した状態のため水分が蒸発し乾燥しやすくなります
乾燥した皮膚からは、刺激物質が侵入しやすく、皮膚障害を発生しやすくなるため、保湿剤を塗布する必要があります。
基本的スキンケア②
③外界刺激からの保護
スキントラブルは浸軟、消化液や排泄物などによる科学的刺激、固定テープ剥離に伴う機械的刺激などの外的刺激が要因になります
浸軟予防
尿や便、浸出液など常に排泄物での汚染がある場合には撥水クリームを使用して皮膚を被膜します。
科学的刺激からの保護
アルカリ性や酸性度の高い排泄物や消化液によって皮膚が刺激を受ける場合は撥水作用の高いオイルやクリームを使用して保護します。
機械的刺激からの保護
テープを剥がす時に角質層も一緒に剥がされてしまいます。剥離刺激が強すぎたり、繰り返されたりすることによって表皮までも障害されます。貼付材を貼付する前に、皮膚被膜剤を使用して隔離刺激から保護します。
便失禁・下血時のスキンケア①
腸内フローラ(細菌叢)の乱れが生じている患者は
その状態で抗生物質を使用すると腸内フローラの乱れに拍車がかかり
腸管内で水分の吸収がうまく行われません。
腸粘膜からの水分分泌が過多になる事から下痢を生じることも多いです。
また、長期間の絶食による腸管粘膜委縮も下痢の要因となります。
機械的刺激によって・皮膚の角質層のバリア機能が破綻した後に
下痢便・下血による科学的刺激が加わると皮膚障害が生じます
この場合、便失禁で頻繁に洗浄・ふき取りを行うことによる皮脂の喪失と
オムツ内の高温多湿環境と便付着による皮膚の浸軟といった2種類の皮膚バリア機能障害に
アンモニアと消化酵素による科学的刺激が加わり高度の皮膚障害を来すことになります。
下痢や下血のある患者に対しては、予防的スキンケアがかかせません。
便失禁・下血時のスキンケア②
①機械的刺激の除去
角質層を傷つけないために、排泄毎の洗浄は行わず、1~2階/日の洗浄にとどめる
皮脂を落とさないようにするため、洗浄時の湯の温度は40℃前後とする
排泄物は肛門清拭剤など油分を含ませたコットンなどで抑えるようにふき取り摩擦を加えない
②科学的刺激の除去
排泄物を除いた後には、撥水作用の高いオイルやクリームを使用して皮膚を保護する。1~3回/日程度の排泄であれば、この方法で予防できる。
軽度の発赤が生じた場合は、アルカリ性を弱酸性に緩衝させる粉状皮膚保護剤を肛門周囲の皮膚に振り、その上から、保護オイルや軟膏で保護する
③失禁用具の使用
頻繁な便失禁が持続する患者や、おむつ交換のたびに循環動態が大きく変動する患者、デバイスや創部の便汚染を防止したい患者、細菌による感染拡大リスクがある患者の場合は、肛門にシリコン製のチューブを挿入し、便や消化液を回収・管理できる便失禁管理システムを用いる